会社が残業代を支払ってくれなくて、
こんなときは、誰に相談するべきだろうか?
こんな会社は辞めたほうがいいのかな…
このような悩みを抱えている方もいるでしょう。
働くモチベーションにも、生活にも関わることですから、どうするべきか迷ってしまいますよね…
残業代を正しく支払うことは、法律で定められた会社の義務です。
会社に残業代を支払うことを求めつつ、会社の対応に問題があるようであれば、転職することも視野に入れましょう。
この記事では、残業代が出ないことを悩んでいる方に向けて、法的な正しい見解や取るべき対処法について解説しています。
かつて企業の人事・労務部門に在籍していた筆者が、具体的な事例を交えながらお話していますので、あなたの悩みを解決するヒントにしてください。
やまもと社会保険労務士事務所
代表 山本 務
50代男性、東京都在住。大卒後はSE、人事労務業務に従事し、社労士試験合格後に50代で社会保険労務士として独立。元労働局総合労働相談員。労働相談、人事労務管理、就業規則、電子申請、給与計算が得意です。【特定社会保険労務士】
残業代を出さない会社のよくある言い分は、法的に問題ないのか?
残業代を出さない会社では、その理由を色々とつけてくるものです。
ここではよくある会社側の言い分と、法的に見た正しい見解を解説していきます。
みなし残業(固定残業代)だから、残業代は出ない
営業手当などの名目で、
一定時間分の残業代を定額で支払っている
という会社も多くあります。
いわゆる「固定残業代」や「みなし残業代」とよばれるものです。
しかし、みなし残業(固定残業代)だからといって、
残業は固定だから、それ以上は支払われないよ
こういった言い分は間違っています。
固定残業代として支払っている金額が、実際の残業時間から算出した残業代よりも少ない場合。
会社側は、不足する分を残業代として支払う必要があるのです。
そのためにも、
上記のような詳細を、契約書などで明記しておく必要があります。
また、実際の残業時間が固定残業で定められている時間より少なかったとしても、「翌月に繰り越して相殺する」という対応はできません。
「固定残業代」というのは、会社と労働者で事前に取り決めをしたうえで、契約書に明記して運用するのが本来の形です。
固定残業代=それ以外の残業代は必要ない!
このような誤ったイメージが先行して、残業代の運用がされていることを、国も懸念しています。
年俸制だから、残業代は出ない
年俸制とは、賃金の額を年単位で決定する仕組みでしかありません。
ですから、年俸制であっても時間外労働や休日労働があれば、年俸とは別に割増賃金を支払う必要があります。
ただし、
上記のように契約書に明記されている場合。
これは「年俸のなかに固定残業代が含まれている」ということなので、実際の残業時間が明記された「△△時間」内であれば、残業代を別途で支払わなくても問題ありません。
ただし、明記された「△△時間」を超えた場合は、年俸とは別に残業代を支給する必要があります。
契約社員・パート・試用期間中だから、残業代は出ない
残業代は雇用形態とは関係なく発生します。
残業代を算出する考え方は、
正社員 / 契約社員 / パート社員 / アルバイト / 派遣社員
といった雇用形態にかかわらず、すべての労働者に共通して適用されるものなのです。
たとえ試用期間中の社員であっても、その会社に雇用されている労働者であることに変わりはありません。
したがって、労働基準法によって守られています。
雇用保険や社会保険も、正社員と同様に加入しなければなりませんし、残業代も支払う必要があるのです。
雇用形態の違いによって、残業代が出ないということはありえない
ということを覚えておきましょう。
管理職だから、残業代は出ない(名ばかり管理職)
労働基準法では、
上記のように規定されています。
しかし、「管理監督者」であるかどうかは、係長や課長といった肩書ではなく、以下の3つの要件をすべて満たしていることが条件です。
- 経営者と一体の立場にあり、ふさわしい職務内容と重要な責任・権限が付与されていること
- 労働時間や仕事量を自分で調整できること
- 賃金などでふさわしい待遇を受けていること
たとえ役職が課長であっても、この3つの条件を満たしていなければ「管理監督者」とはいえず、「名ばかり管理職」となります。
もしあなたが「名ばかり管理職」なのであれば、会社はあなたに残業代や代休を支給しなければなりません。
「管理監督者」の3つの条件については、以下の記事で解説していますので、詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
「残業代」のルールを正しく理解しよう
ここでは、残業代に関する基礎知識について解説します。
最低限の知識を持っておくことで、
- 会社側から誤った説明をされたときに指摘できる
- 労働基準監督署に正しい労働時間を申請できる
上記のような場合にも、冷静に対応することができるはずです。
労働基準法における「残業」と「残業代」のルール
「残業」とは、「法定労働時間」を超えて仕事をすることです。
「法定労働時間」とは、労働基準法32条「労働時間」で定められた労働時間の限度のことで、
このように定められています。
法定労働時間を超えて働かせた場合、つまり「残業」したときには、
「時給×1.25」の割増賃金を支払うこと
上記のように、労働基準法で規定されているのです。(第37条「時間外、休日及び深夜の割増賃金」)
また、社員に残業を行わせるためには、会社は労働組合と、
36協定(時間外・休日労働に関する協定届)
を締結して、労働基準監督署に届け出なくてはなりません。
さらに、残業は無制限にできるわけではなく、「時間外労働の限度に関する基準」によって、
といった上限が決められています。
このように、「残業」や「残業代」については、会社側が好き勝手に決められるものではなく、労働基準法などで明確にルールが定めれられているのです。
「サービス残業」は違法です!
前項でご紹介したとおり、残業代の割増額や支払いについては、労働基準法37条で明確に決められています。
つまり、サービス残業とは、
労働基準法37条に違反している
ということです。
労働基準法37条に違反した場合は、
上記のように規定されています。
ここでいう「使用者」とは経営者だけでなく、業務命令や監督を行う立場の社員も含まれます。
また、会社が残業代を支払わない場合は、労働基準監督署による是正指導が行われる場合も…。
厚生労働省の報告によると、令和2年度に是正指導を行った企業は1062社で、対象労働者は6万人以上です。
監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)|厚生労働省
「サービス残業」を当たり前のことと受け入れず、
サービス残業は違法なことですよね
という認識をもって向き合いましょう。
「労働時間」とは「指揮命令下におかれている時間」のこと
裁判所では、法定労働時間などの基準となる「労働時間」について、
このように定義しています。
つまり、単純に「始業時間から終業時間まで」が、労働時間ということではないのです。
こんな時間も労働時間に含まれます
労働時間とは「指揮命令下におかれている時間」のことですから、以下のような場合も労働時間に含まれます。
- 「始業の9時には仕事が開始できるよう、8時半には出社して資料の整理などをするように」と上司に言われて、8時半に出社した
- お昼休憩中に、「必ずデスクにいて、電話番や来客対応をするように」と上司に言われて、その通りに対応した
さらに❷の場合では、休憩時間を別に与えなければなりません。
残業代を計算する場合には、こういった「本来の労働時間」をすべて含めて、計算する必要があるのです。
労働基準監督署への申告や弁護士に相談する場合には、「本来の労働時間」がすべてわかるように、詳細をメモをしておきましょう。
法定時間外・深夜・休日労働には、割増賃金が適用される
残業代の計算は、残業した「時間単価」に「割増率」をかけて算出します。
時間単価の算出方法
時間単価とは、「1時間あたりの所定賃金額」のことで、「月間所定賃金」を「月平均所定労働時間」で割った金額です。
◆月額所定賃金とは
月額所定賃金とは、毎月の給料から以下の手当を除外した額です。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
◆月平均所定労働時間とは
月平均所定労働時間とは、「毎月の所定労働時間を平均化した時間」のことで、以下の式で算出します。
月平均所定労働時間 = (365日-1年の所定休日数) ✕ 1日の所定労働時間 ÷ 12
◆時間単価を算出する
以上をふまえて、時間単価を計算してみましょう。
時間単価 = 月額所定賃金 ÷ 月平均所定労働時間
残業があった場合には、上記で割り出した時間単価に割増率をかけた金額を、残業代として支払う必要があるのです。
割増率とは
残業などをした場合の割増率は、労働基準法で以下のように定められています。
- 法定労働時間を超えて労働した場合(時間外労働):25%
- 法定休日に働いた場合(休日労働):35%
- 午後10時〜午前5時までの深夜に労働した場合:25%
ちなみに、法定労働時間は「1日8時間」と定められていますので、7時間勤務の会社で8時間の労働を行った場合は、割増のない1時間分の賃金が支払われます
これを「法内残業」といいます。
残業代の請求時効は3年間
残業代の請求時効は、現在の労働基準法においては3年間と定められています。
従来は2年だったのですが、2020年4月1日の法改正により3年に延長されました。また、将来的には5年に延長されることが見込まれています。
出典:厚生労働省資料
したがって、かりに5年分の残業未払いで請求訴訟を起こしたとしても、取り戻せるのは過去3年間分までです。
残業代はいつまででも請求できるわけではなく、未払い分が取り戻せるものではありません。
会社に対して、残業代を請求するか迷った場合でも、
残業代の請求には時効がある
このことを忘れずに認識しておきましょう。
残業代が出ない場合に取るべき対応とは?
勤務している会社で残業代が出ないとき、どのような対応を取るべきなのでしょうか。
いくつかの方法がありますので、個別に解説していきます。
上司、人事担当者に相談する
会社で残業代が出ないときは、まずは社内で、上司や人事の担当者に相談してみてください。
ここで確認しておきたいのは、以下の2点についてです。
- 手違い(過失)で残業代が未払いになっていないか?
- 意図的に出していないなら、出さない言い分は何か?
手違い(過失)で残業代が未払いになっていないか?
本来は残業代を支払うはずなのに、
何らかのミスで支払われていない
というケースもあり得ます。
筆者が以前、派遣会社に営業社員として入社した際の話です。
最初の給料明細を見ると、求人票には記載されていたはずの、家族手当の5,000円が含まれていませんでした。
疑問に思って人事課の人に、
家族手当が支払われていないのですが…
このように相談してみると、担当者のシステム登録ミスが原因だったのです。
すみません、修正します
とすぐに対応してくれたので、その月の分も含めて、翌月以降はしっかり支給されるようになりました。
新しい人事システムを入れた後などは、とくにこういったミスが起こりがちです。
何らかの手違いによって、未払いが起こっていないか?
ということを、まずは確認してみましょう。
意図的に出していないなら、出さない言い分は何か?
手違いではなく、
それはウチの会社では残業代は出さないんですよ
このようにいわれた場合。
このケースでは、
会社はどのような言い分で、残業代を出さないと主張しているのか?
ということを確認してみましょう。
おそらくは、前述した「残業代を出さない会社の言い分」のどれかにあてはまるはずです。
固定残業代でも、そこに含まれる時間以上の場合は残業代が出ると聞いたのですが、私の場合は何時間でしょうか?
できればこんなふうに少し突っ込んで聞いてみると、会社の考え方がより掴めます。
会社の言い分や確認した相手、時間などもメモして、労働基準監督署へ申告する際の証拠のひとつにしましょう。
もちろんここで、
残業代を出してほしいです
と要求することも可能です。
ただ、要望してすんなりと応じてくれるような会社なら、すでに他の社員から言われた際に、残業代を支払っているはず…
ですので、要求が通ることは期待せず、労基署への申告に動くほうが得策かもしれません。
労働基準監督署に証拠をもって申告する
会社が意図的に残業代を出さない…
このような場合は、「残業代が出ていない」という証拠をもって、最寄りの労働基準監督署に申告に行きましょう。
労働基準監督署は、労働基準法その他の労働者保護法規に基づいて事業場に対する監督及び労災保険の給付、労基法違反の取締捜査、労働安全衛生法等による免許の選任、就業規則の検認、届けを行う厚生労働省の出先機関である。略称は労基署、労基、監督署。
出典:Wikipedia
労働基準監督署(労基署)とは、国の機関のひとつで、労働基準法に違反した会社を是正することが役割です。
もちろん無料で相談・申告できます。
申告するときに、誰が申告したのか会社にバレて欲しくない場合は、「匿名による申告」も可能です。
匿名を希望する場合は、労基署に申告に出向いた際に、
匿名でお願いします
このように依頼しましょう。
そうすると労基署では、誰から申告があったのかわからないようにして、会社に働きかけてくれます。
定期的な調査をしています。社員の就労データを提示してください
このような対応をしてくれますので、安心して申告しましょう。
なお「残業代が出ていない」証拠とは、以下のような書類をいいます。
- 雇用契約書
- 賃金規定(時間外手当の取り決めを規定したもの)
- タイムカード
- 給与明細
申告に行く際には、これらの書類をコピーして持参すると話が早いです。
タイムカードについては、
会社から指示されて、やむなく退勤前にタイムカードを押していました…
という場合は、本来の出退勤時間を自分でメモしておきましょう。
自分で書いたものでも問題なく証拠となります。
とにかく証拠となる書類を準備しておくこと
上記がポイントです。
労働組合を通じて団体交渉する
労働組合に加入されている方であれば、
- 労働組合に相談する
- 労働組合を通じて、団体交渉や団体行動する
上記のような対応が可能です。
また、労働組合に加入していない方でも、合同労組・ユニオンというものがあるので、一人でも労働組合に加入することができます。
合同労組・ユニオンとは
労働者が所属している会社を問わず、個人単位で加盟できる労働組合のことをユニオンまたは合同労組といいます。
ユニオン・合同労組は、一般的な会社別の労働組合とはちがって、複数の会社や異業種の会社の労働者が、その加入員となっています。
出典:赤井労務マネジメント事務所
合同労組・ユニオンに加入する場合は、組合費が毎月発生します。
団体交渉や団体行動によって、未払いの残業代の請求に成功した場合は、
上記を手数料として、労働組合から請求されることが一般的です。
労働組合を利用した場合には、「残業代が支払われても満額は戻ってこない」という点には留意しておきましょう。
加入する前でも、無料相談が可能な合同労組・ユニオンが多いので、いちど相談してみることをおすすめします。
弁護士に依頼する
労働基準監督署に申告したとしても、
思ったような指導が会社にされなかった…
このようなケースもあります。
労基署の調査時に「確たる証拠」が見つからないと、労基署は会社に対して、指導・改善をおこなうことができないのです。
確実に未払いの残業代を取り立てたいのであれば、
というのが有効な方法となります。
残業代請求の弁護士費用・相場はいくら?出来るだけ費用を抑えるコツも解説|労働問題弁護士ナビ
弁護士をつけることで、会社と直接交渉することができ、会社が支払いに応じてくれるケースもあるでしょう。
裁判になった場合でも、労基署の調査時に見つからなかった証拠を、証人尋問などで認定してもらえる場合もあるのです。
ただし、弁護士に依頼する場合は、
- それなりの費用がかかる
- 実名での請求が必須となる
上記のようなデメリットもあります。
弁護士を立てて実名で請求したり、場合によっては裁判に持ち込むわけですから、
会社からの風当たりは相当厳しくなる
ということは覚悟してください。
したがって、弁護士へ依頼するのは、会社を辞めることを判断してからのほうがよいです。
ただし、残業代の請求権が消滅する時効は3年しかありませんので、次項を確認したうえで、方向性を決めておきましょう。
残業代が出ないブラック企業は辞めるべき?5つの判断基準で考えよう
残業代が出ないと、会社を辞めたほうがいいのか迷いますよね。
こんなブラック企業は辞めるべきなのだろうか…
と悩んでしまったときに、会社を辞めるべきかどうかの判断基準についてご説明します。
残業代が出ないことに加えて、以下の5つに当てはまるようであれば、会社を辞める前提で転職活動を始めましょう。
残業時間が長すぎる
残業代が出ない会社のうえに、長時間の残業が常態化している場合には、その会社はすぐに辞めるべきでしょう。
ここまでご説明してきたように、従業員の時間外労働に対して残業代を払うことは、会社として当然の責任です。
それにもかかわらず、長時間の残業で従業員の時間を拘束するだけでなく、その残業の対価も支払わない。
このような会社は、
従業員から労働力を搾取しているだけ
といっても過言ではありません。
毎月の給与を時給で計算した場合に、最低賃金を下回る賃金で働いている可能性もあります。
そんな会社であれば、すぐに辞めるべきでしょう。
セクハラ・パワハラなどが発生している
残業代の未払いが起きている会社では、
セクハラで悩んでいます…
上司のパワハラがひどいんだけど…
こういったトラブルが横行していて、職場環境も悪いケースが多いです。
健全な会社であれば、ハラスメントなどのトラブルを放置することはあり得ません。
しかし、残業代を支払わないという法律違反をしているような会社ですから、
従業員のために職場環境を良くしなければ…
このような対応をする可能性はかなり低いです。
従業員への責任を果たさないような会社は、辞めるべきでしょう。
パート・契約社員に有給休暇を与えていない
パート社員や契約社員であっても、もちろん有給休暇を与えなくてはいけません。
もしあなたの会社が、パートや契約社員の方に有給休暇を与えていないのであれば、それは労働基準法違反です。
- 残業代も、有給休暇も出さない
このような会社は、労働法を守る意識がありませんし、社員のことを考えていません。
こういう会社では、コンプライアンス意識がかなり低いため、
違法な仕事を押し付けてくる
という可能性も十分にあり得ます。
違法な仕事で大変な目に合う前に、こういった会社は辞めるべきでしょう。
労働基準監督署に申告したことで、不利益な仕打ちを受ける
労働基準監督署で匿名の申告を依頼しても、
特定の社員しか知り得ないことを、監督官が確認してきた!
このように、申告したと思われる人物がわかってしまうケースもあり得ます。
そういった場合に、会社が申告者に対して左遷や降格など、
- 明らかに不利益な仕打ちをしてくる
ということであれば、その会社は辞めるべきでしょう。
会社のためを思ってしたことなのに、余計なことをしたと思われるなんて…
それはつまり、会社には是正する気がないということです。
その会社の主役は社員ではなく、社長や上層部になってしまっています。
これからの少子高齢化時代、社員ファーストでない会社は、優秀な社員を抱え込むのが難しくなるでしょう。
「社労士に任せているから」と取り合ってくれない
とくに中小会社ならば、社長に直接相談することも可能でしょう。
このとき少しでも話を聞いてくれて、
わかった。人事に確認しよう
このような対応をしてくれるならよいのですが、
そういったことは、社労士に任せているからよくわからないんだ
上記のように社長が取り合ってくれない場合は、こちらもやはり、会社は是正する気がありません。
とても残念なことですが、社員の悩みを聞き入れる気すらないのです。
風通しが悪い会社というのは、社員がまわりに相談ができないため、生産性が低くなってしまいます。
また、お互いに注意しあうことがないため、不祥事なども起こりやすいのです。
このような先行きが不安な会社も、我慢せずに辞めるべきでしょう。
どうしようもないときは、「退職代行」もひとつの方法
基本的には、責任をもって退職の手続きを進めるべきですが、
- 上司に相談しても拒否されてしまう
- 周りの反応が怖くて言い出せない
- 精神的に辛いのですぐ辞めたい
上記のように、どうしようもないというケースであれば、退職代行サービスを利用するのもひとつの方法です。
退職代行を利用するメリットとは?
退職代行とは、労働者本人の代わりに弁護士や代行業者が、会社へ退職の意思を伝えるサービスのこと。
退職代行を利用することで、
- 精神的な負担を減らせる
- 即日退職できる
- 正当な権利を行使できる
上記のようなメリットがあります。
精神的な負担を減らせる
自力で退職を進める場合には、上司や同僚への報告、業務の引き継ぎなど、さまざまな手続きが必要です。
退職理由に関して、周りからの理解が得られそうにない場合は、
- 強い引き留めにあう
- 嫌がらせを受ける
このようなリスクもあるでしょう。
しかし、退職代行を利用すれば、労働者本人は会社と直接やりとりをする必要がありません。
代行業者が手続きを淡々と進めるだけになるので、精神的な負担を大幅に軽減できるでしょう。
即日退職できる
即日退職できるのも、退職代行を利用するメリットの一つです。
本来、民法上では、
ということが定められています。
民法第627条
出典:Wikibooks
1.当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
しかし、実際には、
繁忙期は避けてほしい
後任が決まるまで待ってほしい
このような会社都合の理由で、退職日が先延ばしにされてしまうことも少なくありません。
退職代行を使う場合は、退職までに必要な2週間の期間を有休消化や欠勤扱いとすることで、
退職代行が会社に連絡した日から会社に出社しない
という対応が可能になります。
ハラスメントを受けている場合や、体調が悪化している場合など、
1日でも早く会社を辞めたい…
という場合には、心強い味方になってくれるでしょう。
正当な権利を行使できる
最近では、弁護士や労働組合が退職代行サービスに乗り出すケースも増えているので、
- 残業代の未払いがある
- 有休消化を拒まれる
といった労働問題に対しても、代理人として責任をもって対応してもらえます。
退職代行を依頼すると費用が発生しますが、初回相談は無料です。
会社側への交渉ごとがある場合も、対応可能かいちど相談してみることをおすすめします。
- 【安さで選ぶなら】退職代行EXIT
民間企業が運営。業界のパイオニアが最安値に挑戦中。リピート割がお得。20,000円(追加料金なし) - 【会社と交渉したい】退職代行SARABA
労働組合が運営。24時間365日いつでも相談OK。即日の退職連絡も可能。24,000円(追加料金なし) - 【弁護士に任せたい】
弁護士法人みやび
弁護士法人が運営。弁護士退職代行の老舗。会社との交渉や請求、万一の訴訟対応もOK。55,000円~
退職代行を使っても大丈夫?
そうはいっても、「退職代行」と聞くと、
会社の同意がないまま、無理やり辞めていいのだろうか…
と思う人もいるかもしれませんね。
そもそも退職は、労働者に対して法律で認められている権利です。
何らかの理由で辞めにくいという場合は、
退職を阻害している会社側の対応に問題がある
という場合が多いのではないでしょうか?
退職代行を利用することに、負い目を感じる必要はありません。
今では、
- 利用者の58%が30代以上、40代以上の割合は28%
- 40代でも34.8%の人が、退職代行の利用を検討
上記のような調査データもあるくらい、年齢や会社規模を問わず、退職代行は幅広く利用されています。
当サイトでも、実際に利用した人たちの体験談を数多く紹介しています。詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
転職で失敗しないためにするべきこと
転職することを決めたけど、
残業代が出ないので会社を辞めたけれど、転職先でもまた払ってくれなかった…
こんなことになっては意味がありません。
そんなトラブルを回避するためにも、転職先を選ぶ際に押さえておきたいポイントをご紹介します。
求人票の項目をチェックする
2020年1月6日から、ハローワークのサービスが充実して、求人票が新しくなりました。
求人票が一新!掲載情報量を増すことで、仕事をお探しの方が希望する企業・団体などの情報を、もっと深く知ることができるようになります。そして、豊富な情報を元に、充実した職業相談・紹介を行い、適格なマッチングを支援します。
出典:2020年1月6日からハローワークのサービスが充実します!|厚生労働省
ハローワークの求人票に記載される情報が、より詳しくなったのですが、
というのが特筆すべきポイントです。
新しいハローワークの求人票で、「固定残業代(C)」欄が「あり」になっている会社の求人は、まず避けた方がよいでしょう。
固定残業代として毎月払っているのだから、それ以外の残業代は支払わない!
というのが、残業代を出さない会社の典型的な言い訳だからです。
ただ、どうしても働きたい会社で、「固定残業代(C)」欄が「あり」になっている場合があるかもしれません。
その場合は、「〇〇時間を超える場合は別途支給」という追記がされているはずですので、別途支給される時間をしっかり覚えておきましょう。
そして働き始めて、基準となる「〇〇時間」を超えた場合に、
きちんと残業代が支払われているか?
ということを確認してください。
このように、固定残業の「〇〇時間」を記載することを義務化したのは、とても良い変化といえます。
ハローワークに「固定残業代の欄」が作られるほど、
求人票と実際の給与が違う!
上記のような、固定残業代の苦情を申し立てる労働者が多かったのです。
せっかくの良策ですので、求人票の欄はしっかり確認しておきしましょう。
ハローワークの担当者にしっかり確認する
ハローワークの求人票を見て応募する場合は、
前の会社は残業代を払ってくれないから辞めました。こちらの会社は大丈夫でしょうか?
このように、ハローワークの担当者にしっかりと確認しておきましょう。
あまり表立って教えてはくれないのですが、当然ながらハローワークには、
といった情報は残っています。
ほかにも、会社について特筆すべき情報が蓄積されているのです。
実際に、筆者はハローワークの担当者に、
あなたが前にいた会社では、面接で血液型を聞かれるんだってね
このように言われて驚いたことがあります。
公的機関ですから、ハローワークの担当者から、
本当にこの会社でいいんですか?
このようなことはなかなか言えないでしょう
しかし求職者が真剣に聞いて、以前に同じような事例に心当たりがあれば、ハローワークの担当者も教えてくれる場合があります。
そのためにも、こまめにハローワークに通って、なじみの担当者をつくることをおすすめします。
ハローワークなどの公共支援サービスについては、以下の記事で解説していますので、詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
転職エージェントを活用する
転職エージェントを利用することも、問題なく転職する方法のひとつといえます。
転職エージェントとは、会社と求職者の間に立って、橋渡し役をしてくれる転職サービスのこと。
賃金や労働条件などについても、応募企業と交渉してくれます。
前もってエージェントの担当者に、
残業代がきちんと支払われる会社を紹介してください
このように依頼しておけば、該当する会社を紹介してくれるでしょう。
さらに、転職のプロによるサポートを受けることで、以下のようなたくさんのメリットを得ることができます。
- 転職サイトなどに出回っていない、40代向けの非公開求人を紹介してもらえる
- 履歴書や職務経歴書の添削をしてもらえる
- 面接対策のサポートをしてもらえる
- 業界や企業について、独自の情報を提供してもらえる
- 求人企業について、気兼ねなく質問できる
- 選考に落選した理由を教えてくれるので、次への対策が打てる
- キャリアや市場価値をプロの視点で見定めて、アピールするべき自身の強みを教えてくれる
- 応募企業との連絡や日程など、エージェント担当者が間に入って調整してくれる
- 入社時期や年収条件など、交渉ごとを代行してくれる
40代が無駄なく効率的に転職活動を進めるうえで、利用しない手はないサービスです。
しかも、転職エージェントは人材が採用されたときに、企業から成功報酬を得るビジネスモデルのため、転職者は無料で利用することができます。
転職エージェントの選び方については、以下の記事で解説していますので、詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
労働条件通知書を入社前に出してもらう
転職を希望する会社から内定をもらえたなら、賃金や勤務時間などが記載された、「労働条件通知書」の発行を依頼しましょう。
労働基準法15条で「労働条件の明示」が会社に義務付けられており、違反すれば罰金です。
労働条件の明示は、書面(または電子メール)で行わなければなりません。
明示する時期については、法的には「労働契約の締結に際し」と明確ではないため、企業によってバラバラで、入社日に渡される会社もあります。
しかし、内定が決まった時点で依頼して、会社側の対応を見ましょう。
すぐに通知書を出してくれて、その内容が求人票と変わらないようであれば、入社してもとくに問題はありません。
ただ、何かと理由をつけて出さない会社は要注意です。
筆者が以前在籍していた会社でも、やはり労働条件通知書を出してくれませんでした。
しかも、
残業代は毎月の営業手当に含まれているから出さない
このように言われたので、
では営業手当に何時間分の残業が含まれているのでしょうか?
と尋ねてみたのですが、聞いても教えてくれません。
ひとつでも法令違反をするような会社は、ほかにも多くの法令違反をしてしまうものなのです。
担当者が「通知書発行の義務を知らない」という場合もあるかもしれません。
しかし、人事担当者の無知を周囲がサポートできないというのは、大変リスクの高い会社だといえるでしょう。
また、悪質ですが意図的に発行しない会社もあります。
こちらが依頼しても発行してくれない場合は、会社選びを再考した方がよいかもしれませんね。
まとめ:残業代を支払うのは会社の義務。悪質な場合は転職を検討するべき
今回は、残業代が出ないことを悩んでいる方に向けて、
- 残業代を出さない会社のよくある言い分と法的に見た正しい見解
- 残業代が出ない場合に取るべき対処法とは?
- 会社を辞めるかどうかを判断する5つの基準
- 転職で失敗しないためにすべきこと
上記の内容についてお話ししてきました。
残業代を正しく支払うことは、法律で定められた会社の義務です。
まずは会社に残業代を支払うことを求めつつ、5つの判断基準で、会社を辞めるべきかを見定めましょう。
労働者を搾取する悪質な会社だと判断するのなら、転職活動を始めつつ、
- 労働基準監督署に匿名で申告してみる
- 残業代の未払い分を請求するために、労働組合や弁護士を利用する
上記のような対応を取ることをおすすめします。
残業代を請求できる時効は、3年間しかありません。
残業代が出ないから、会社を辞めるべきだろうか…
もしこのような気持ちでいるのなら、できるだけ早く行動しましょう。