- 退職願・退職届・辞表の違いについて
- 退職願のテンプレートと書き方(縦書き・横書き)
- 退職届のテンプレートと書き方(縦書き・横書き)
- 提出する際の封筒について
- 書くときに注意したいこと
会社を退職するときは、いま勤務している会社に、辞めるという意思を伝えなければいけません。
その過程で、退職届や退職願を会社に提出することになるでしょう。
でもはじめて転職する方であれば、
退職届と退職願で何が違うの?
どういうふうに書けばいいのかな…
このように、わからないことも多いですよね。
この記事では、はじめての方でも確認しながら書けるように、退職願・退職届の書き方について、例文をご紹介しながらわかりやすく解説しています。
ダウンロードしてそのまま使える、令和年号版のテンプレート・フォーマット(Word/PDF)もご用意していますので、ぜひご活用ください。
やまもと社会保険労務士事務所
代表 山本 務
50代男性、東京都在住。大卒後はSE、人事労務業務に従事し、社労士試験合格後に50代で社会保険労務士として独立。元労働局総合労働相談員。労働相談、人事労務管理、就業規則、電子申請、給与計算が得意です。【特定社会保険労務士】
退職願・退職届・辞表の違いとは?
退職するときに、退職願や退職届のどれを提出すればよいのか、戸惑うことはありませんか?
まずは正しい知識を確認しておきましょう。
退職願と退職届、辞表の違いをまとめると、以下のとおりです。
- 退職願:
退職を会社にお願いする書式。上司に退職を相談後に提出する - 退職届:
会社に退職を通告する書式。一方的できつい印象を与える場合も… - 辞表:
経営陣が役職を辞する場合や公務員が辞めるときに使用する書式
どれも同じように思えても、それぞれに役割があり違うものなので、混同しないようにしましょう。
退職願:退職の意思を打診する際の書類
退職を会社に伝える場合、一般的な流れとしては、
という形となります。
退職願とは形式上、退職したい意向を会社に意思表示するための書類です。
退職願が提出されることで、会社側は労働契約の解除を検討して、
- 後任者の選定
- 業務の引継ぎ
- 退職時期の検討
このような準備に入ります。
会社側が退職希望者を高く評価している場合は、引き留め策がとられることも……
あくまでも「願い出るための書類」という位置づけなので、会社に受理されても、双方の合意があれば、退職願を撤回できる場合もあります。
退職届:退職日を明記して会社に退職を届け出る書類
退職届とは、退職日を明記して、会社に退職することを届け出るための書類です。
会社を円満退職するときの流れとしては、
- まずは退職願を上司に手渡して、退職を打診する
- 会社に退職が認められた後に、退職日を明記した退職届を作成して、会社に提出する
上記のような手順となります。
ですので、いきなり退職届を出してしまうと、
ずいぶん一方的だな…
このような一方的できつい印象を、会社側に与えてしまう可能性があるのです。
退職届は、会社に受理されたあとに撤回はできない書類とされていますので、注意して取り扱うようにしてください。
辞表:経営陣の辞職や公務員が辞める際の書類
辞表とは、
- 取締役などの経営側にいる人物が、役職を辞めるとき
- 公務員が辞める場合
上記などの場合に提出する届け出のことです。
テレビドラマなどで、刑事さんが辞表を出すシーンをよく見かけますよね。
これは、刑事さんも公務員だからです。
一般の企業においては、取締役などの経営側に立つ人以外は、辞表を使用することはないので注意しましょう。
退職願(縦書き)のテンプレートと書き方
ここでは、退職願を縦書きで作成する際に、ダウンロードして使用できるテンプレートと、書き方についてご紹介します。
退職願(縦書き・令和版)のフォーマット【Word・PDF】
退職願(縦書き)のテンプレートは、以下をクリックしてダウンロードしてください。
退職願(縦書き)の書き方【例文あり】
退職願の文面は、とくに個性を出す必要はありません。
基本的には定型文ですから、余計なことは書かないのが基本です。
ここでは、縦書きの例文をもとに、書き方を解説していきます。
① 「退職願」の文字
「退職願」の文字は、他の文字より少し大きめに書くことを心がけましょう。
② 「私事」
「私事(しじ/わたくしごと)」は個人的なこと、プライベートなことを表します。「私こと」の意味です。
これは一番下に書くのが決まりとなっています。
「私事」の代わりに、「私儀(わたくしぎ)」と書くこともありますが、私儀も「私こと」という意味で使われ、挨拶状などに用いられる言葉です。
私儀の方がかしこまった印象を与えます。
③ 「一身上の都合」
退職理由は「一身上の都合」が決まり文句です。
退職願で退職理由を具体的に説明する必要はありませんので、「一身上の都合」と記入しましょう。
④ 日付の記入
日付の記入は西暦でもかまいませんが、和暦の方が一般的です。
とくに縦書きの時は、和暦の方が見た目もよく綺麗に見えます。
和暦でも西暦の場合でも、退職日付と提出日付は、どちらかの書き方で統一するようにしましょう。
⑤ 数字の記入
縦書きの時には数字は漢数字で書きます。西暦で書く場合も漢数字で書きましょう。
西暦を漢字で書くと、2022年であれば「二〇二二年」か「二千二十二年」です。
ちなみに二〇二二年の「〇」は、数字の「0(ゼロ)」でも丸でもなく、漢数字のゼロです。
⑥ 氏名の記入
名前は必ず自筆で書きましょう。パソコンで作成する場合でも、名前だけは自筆で記入します。
そして名前の下に印鑑を押します。
とくに指摘されることもないでしょうが、シヤチハタは避けておくべきです。
⑦ 会社名の記入
勤務中の会社の正式名称を書きます。
例文では前株となっていますが、もちろん後株の会社もありますので、ご自身の会社の正式名で記入してください。
(株)などと省略せず、「株式会社」とすべてを記入するようにしましょう。
⑧ 宛名
宛先は基本的に「代表取締役社長」宛てです。
会長などが代表権を持っている場合もありますが、一般的には社長で大丈夫です。
⑨ 敬称
敬称は「様」でも「殿」でも構いません。
ただ、「殿」の場合は、同格か目下に使うものという印象が強いため、「様」を使用しておいた方が無難です。
退職願(横書き)のテンプレートと書き方
ここでは、退職願を横書きで作成する際に、ダウンロードして使用できるテンプレートと、書き方についてご紹介します。
退職願(横書き・令和版)のフォーマット【Word・PDF】
退職願(横書き)のテンプレートは、以下をクリックしてダウンロードしてください。
退職願(横書き)の書き方【例文あり】
横書きの場合も、注意事項は縦書きとほぼ同じなのですが、3点だけ注意しておくべき点があります。
① 数字の記入
横書きの場合は、日付の数字を算用数字(アラビア数字)で記入した方が見やすく、一般的です。
例えば、「令和4年8月15日」というように記入します。
② 宛名
縦書きの際は、宛名はいちばん最後に記入しましたが、横書きの場合は先に記入します。
③ 「以上」
横書きの場合は、最後に「以上」で締めくくります。
退職届(縦書き)のテンプレートと書き方
ここでは、縦書きの退職届を作成する際に、ダウンロードして使用できるテンプレートと、書き方についてご紹介します。
退職届(縦書き・令和版)のフォーマット【Word・PDF】
退職届(縦書き)のテンプレートは、以下をクリックしてダウンロードしてください。
退職届(縦書き)の書き方【例文あり】
退職届で記入する場合も、注意事項は退職願とほぼ同じですが、気をつけるポイントが2つあります。
① 「退職届」
タイトルは「退職届」にします。
② 「退職致します」と言い切る
退職「願」ではなく、退職「届」なので、「退職致します」と言い切ります。
退職届(横書き)のテンプレートと書き方
ここでは、横書きの退職届を作成する際に、ダウンロードして使用できるテンプレートと、書き方についてご紹介します。
退職届(横書き・令和版)のフォーマット【Word・PDF】
退職届(横書き)のテンプレートは、以下をクリックしてダウンロードしてください。
退職届(横書き)の書き方【例文あり】
横書きで退職届を書く場合は、以下の5点に注意しましょう。
① 「退職届」
タイトルは「退職届」にします。
② 数字の記入
横書きの場合は、日付の数字を算用数字(アラビア数字)で記入した方が見やすく、一般的です。
例えば、「令和4年8月15日」というように記入します。
③ 宛名
縦書きの際は、宛名はいちばん最後に記入しましたが、横書きの場合は先に記入します。
④ 「退職致します」と言い切る
退職「願」ではなく、退職「届」なので、「退職致します」と言い切ります。
⑤ 「以上」
横書きの場合は、最後に「以上」で締めくくります。
退職願・退職届を入れる封筒について
退職願や退職届を提出する際は、封筒は必ず白封筒を使用してください。
茶封筒はビジネスマナーとして、使用しないほうが望ましいとされています。
退職願を書き上げた便せんを、1/3に折って封入します。
封筒の書き方
封筒の記入方法は、以下の図を参考にしてください。
まず、用意した白封筒にまず表書きをします。
封筒の表面中央に「退職願」と記入してください。(退職届の場合は「退職届」と記入)
次に封筒をひっくり返して、裏面の左下に、自分の所属部署と氏名を記入しましょう。
封筒への記入が終わったら、折り曲げた便せんを封入し、続いてのりで口をとめて、「〆」と書き記します。
封筒のサイズはどうする?
封筒のサイズについては、
- A4サイズの便せん ⇒ 長形3号の白封筒
- B5サイズの便せん ⇒ 長形4号の白封筒
上記のサイズを選びましょう。
退職届・退職願で注意したい5つのこと
退職届や退職願を提出する際に、注意しておきたいポイントが4つあります。
書き始める前に、まずはこちらをチェックしておきましょう。
最低でも2週間前には提出する
法的なことをいえば、期間を定めていない雇用の場合は、
とされています。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
出典:民法第627条
しかし、引き継ぎなどを考慮すると、2週間前では短すぎます。
就業規則に従って、会社側にもなるべく迷惑が掛からないように、1~2ヶ月前には提出しておくことが理想です。
会社に所定のフォーマットがないか確認する
会社によっては、退職願・退職届のフォーマットが用意されている場合もあります。
まずは会社所定のフォーマットがないかを確認しましょう。
とくに指定がされていない場合は、自分で作成する必要があります。
当記事では、テンプレートや書き方についても解説していますので、参考にしながら作成してください。
どの書式を使用するかですが、退職届をいきなり出すのはきつい印象を与えます。
ですので、とくにこだわりがなければ、退職願を提出するのがおすすめです。
縦書き・横書きについてですが、縦書きが一般的なので、とくにこだわりがないのなら、縦書きのものを使用しましょう。
可能であれば、手書きのほうがよい
退職願を書く場合は、「縦書き」の書式で「手書き」で記入することが一般的です。
パソコンのWordで作成してもかまいませんが、経営陣の年齢層が高い会社であれば、
手書きするのが常識だろ…
と思っている人がいるかもしれません。
ご自身の会社の状況で判断してください。
とくにこだわりがないのであれば、手書きすることをおすすめします。
履歴書でもそうですが、手書きのほうがなんとなく誠意を感じられるものです。
文字数もそれほど多くありませんから、ぜひチャレンジしてみましょう。
字がきたなくて手書きに自信がない場合は、パソコンで作成したあとで、
という形がおすすめです。
紙は白地のもので、無地か縦書きの便箋を使用して、文字が消えないように、黒インクのペンを使いましょう。
修正ペンは使わない
これはビジネス常識の範囲内ですが、退職願や退職届は非常に重要な書類です。
人生の方向転換をすることになりますし、会社への影響も大きいものとなります。
書き間違えた場合に、修正ペンで修正を施して提出することは絶対にNGです。
書き損じてしまった場合は、もういちど書き直しましょう。
退職届は原則撤回できない
退職届は原則として撤回できません。
ついムキになって、勢いで退職届を出してしまった…
このようなことが無いようにしましょう。
退職願については、いちど会社側に受理されたとしても、その後に話しをするなかで、撤回が受け入れられる場合もあります。
ただしこの場合も、「退職の気持ちがあるヤツ」というレッテルが貼られてしまいます。
- いまの環境は本当に我慢できないほどひどいものか?
- 自分の努力で変えることはできないか?
上記のようなことをよく考えてから、退職を申し出るようにしましょう。
退職願を提出するタイミングは?
退職願はいつ提出するべきでしょうか?
転職先が決まっても、いまの会社を退職することができなければ、転職することができません。
ここでは、退職先を提出するタイミングについて、押さえておくべきことをご紹介します。
退職日は上司と相談して決定する
退職日はいきなりこちらから指定するのではなく、まずは上司と相談したうえで、いつ退職するのかを固めていくようにしましょう。
この日までには辞めたい…
このように考えている日付の、1~2ヶ月前には伝えておくのが理想的です。
退職の調整において、上司は会社の窓口となる存在ですから、上司ときちんと意見交換をして、双方が納得できる退職日を定めましょう。
そして、退職日が決まった段階で、退職願を書いて上司に提出します。
どちらかが身勝手な都合を押し付けると、どうしても関係がギクシャクしてしまうものです。
上司とよく話し合って決めることで、円満退社へとつながります。
なるべく繁忙期は避ける
これまで働いてきた企業ですから、
繁忙期は〇月だよな…
ということはわかっているはずです。
社会人のマナーとして、人手が足りなくて社内が慌ただしくなる繁忙期に、退職することはできるだけ避けましょう。
忙しくなることが分かっているのに、後任人事や引継ぎが十分ではないなかで退職を進めるのは、上司や同僚にも悪印象を与えます。
できるだけ繁忙期を避けて、
会社にも上司の気持ちにも、ゆとりがある時期に退職できるように段取りする
というのが、円満に退職の話を進めるポイントです。
プロジェクトの終了前は避ける
いま自分が関わっているプロジェクトがあるのなら、
プロジェクトが終了した段階で退職したいのですが…
このような段取りで話を持ち出しましょう。
自分が関わったプロジェクトは、最後まで責任を果たすことが、社会人としてのけじめです。
手掛けたプロジェクトを途中で放り出すようなことなく、最後まで責任を果たすことで、円満退社することができます。
おわりに:退職届は忘れずにコピーを取っておこう
退職届をはじめて書く時は、ちょっと感慨深い気持ちになるのではないでしょうか。
好き嫌いはあるにせよ、長い期間、それなりの給料をもらってお世話になった会社です。
総決算のつもりで、退職届はできれば手書きで書くことをおすすめします。
退職届の場合は、会社への通告という意味合いが強くなりますので、円満に退職できる場合は、退職願として提出したほうがよいでしょう。
あと忘れてはいけないことは、提出する前にコピーを取っておくことです。
退職する日付を忘れることはないと思いますが、念のため、自分でも控えを持っておいた方が安心できます。
とくに手書きをした場合は、手元にデータが残りませんので、必ずコピーを取っておきましょう。